TOKの基本的な考え方(2)

もう少しTOKの言葉を使って基本的な考え方をみていきましょう。以下の図を見てください。

oxford TOK diagramDombrowski, E., Rotenberg, L. & Bick, M. (2013). Theory of Knowledge. (p71). Oxford.

この図は、TOKでいう「知識」がどのようなものか示した図です。
3つの四角に入っているのは、「私たちは〜であると知っている(We know that…)」「私たちは経験から知っている(We experience)」「私たちは方法を知っている(We know how)」といった3つの「知っている」です。私たちが知っていると言う場合は、大抵この3つに入ります。ものごとをTOK的に捉える最初のステップとして、まずはこれを考える所から始めます。
そして、それらのベースになっている「知識」という集合体が、「共有された知識(Shared knowledge)」と「個人的な知識(Personal Knowledge)」から成り立っていることが分かります。この図ではその2つが対局にあって、大きな円を作っています。実際はベン図のような形で、共有された知識と個人的な知識は全く別の場合もあるし、重なる部分もあるということになりますが、それに関しては後日詳しく説明します。
そして、その大きな円の中に、8つの「知るための方法」があります。「知覚」、「感情」、「言語」、「理論」、「信仰」、「直感」、「想像」、「記憶」です。私たちが知るためには、必ずこの8つのうちのどれか、またはそれらの組み合わせを使っています。いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように知るかによって、これらの使い方が変わってきたりもします。私たちは、何らかの形で知り、それを知識として主張をし、それを基にまた新しい事を知る。このように知識を構築していく中で、必ずこの8つの方法を使っているのです。

このように、「知識に関する主張(knowledge claim)」を「共有された知識」や「個人的な知識」という枠組みの中で捉え、それに関しての「知るための方法」を考察していくと、円の中心にある「私たちはどのように知るのか(How do we know?)」へとたどり着くことができます。TOKでは、このような用語を使いながら、知ることを深く掘り下げていきます。

今回で、TOKの全体像に関しての説明は終わりです。次回からは、TOK用語を中心に、さらに細かくTOKがどのようなものかを説明していきます。

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TOKの基本的な考え方(1)

TOKの基本的な考え方について、まずは簡潔に説明したいと思います。

TOKを通して探求していくことは、「どのように私たちは知るのか」です。つまり「知る人」と「知識」の関係性です。

何か物事を「知る人」がいて、その人はその人独自のものの見方を持ちながら知覚、感情、言語、理論、直感等を使いながら様々な方法で知ります。また、「知識」というものは領域ごとに性質が違います。自然科学、芸術、歴史、倫理等、それぞれの領域にはその分野独自の言語、発展の歴史等があります。
このように、知るプロセスを一つ一つ明らかにしていき、知識の本質を詳しく見ていくことで、私たちが知っていると主張することを見つめ直していけます。そして、今まで特に意識していなかったことが意識化され、より一層クリティカルに物事をみれるようになります。

最終的には、実社会の状況からさらにもう一歩踏み込んで、「知識に関する問い」という、知識そのものについての問いをTOKの語彙を使って探求することへとつなげていきます。これについてはまた順を追って詳しく説明します。

今回はここまでです。この説明を読んでまだピンとこないかもしれませんが、少しずつ理解していけば大丈夫です。TOKをまだ良く知らない人が、TOKは哲学であるとか批判する方法論を教えているというイメージを持っている場合が多々あります。しかし、ここでの説明でわかるように、TOKでは至って冷静に、知るというプロセスや知識の本質を一つ一つ丁寧に明らかにしていきます。あくまで知を理論的に分析していくのが「知の理論」ということをまずは覚えておいてください。

IB DPの中でのTOKの役割とは

今回はまず IB Diploma Programme (DP) の中で、知の理論がどのような役割を果たすのかを見ていきましょう。

「知の理論」とはIB DPの一部で、一般的な教科とは違うところに位置づけられています。以下の図は、DPの学びを表した図です。スクリーンショット(2015-02-03 15.56.19)

国際バカロレア機構 (2014)「『知の理論』(TOK) の手引き」より

中心にあるのは、「IBの学習者像」で表されるような学習者であり、指導の方法や学習の方法を通じて、6つの分野の科目を学習していきます。その学習の核となる3つの要素が、課題論文(EE)、創造性・活動・奉仕(CAS)、そして知の理論(TOK)です。

課題論文では論点を見つけ、調査をしながら論を展開し、自らの意見を主張する文書を作成する力がつきます。創造性・活動・奉仕では、クリエイティブな部分をのばしたり、健康的なライフスタイルのための身体的活動を行ったり、社会に貢献したりすることで、IBの学習者像に則ったアイデンティティーが育成されます。そして、知の理論では、「知っている」ということを深く掘り下げ、どのような方法で学習者は「知る」のか、そもそも「知っている」ということはどういうことなのか、また、知識そのものの本質を分野ごとに分析していったらどのように違うのか等、知識に関するクリティカルシンキングを育成します。

図のように、教科と学習者の間に核としてこれら3つがあります。それは、学習者がただ単に科目を学んで知識を覚えれば良いからでは無く、さまざまな学びをする中で、学習者独自の思考やアイデンティティーが生まれ、それを論理的に主張していけることが重要視されているからです。

知の理論はこのような文脈の中で、学習者がどのように「知」と向き合うかを考えさせる、IB DP にとって核となる科目です。学習者と知をつなぐこの科目は、いったいどのような内容なのでしょうか。

次回は知の理論における、「学習者」と「知」の関係性を見ていきたいと思います。

IB Theory of Knowledge とは何か

IB Theory of Knowledge (TOK) は、International Baccalaureate DP (国際バカロレア ディプロマプログラム)の中心となる教科の一つです。TOKは日本語で正式に「知の理論」と訳されています。

ここで、「正式に」とあえて言うのは、2014年に国際バカロレア機構が日本語でIBの一部の授業を行うことを許可したことで、国際バカロレア機構が少しずつ、IBで使われる用語を日本語に訳して公開しています。この研究はこの正式な訳を使うので、今後日本語でTOKを教える際に役立つ教材になるでしょう。

全ての教科に通ずる「知」に関する考え方の核心はここにあります。

これからの更新で少しずつ、丁寧にTOKとは何かを掘り下げていきます。コメントにて質問やディスカッション、大歓迎です。ぜひ一緒にTOKについて研究していきましょう。